今年(2017)の6月に徳島県の神山町という所へ行ってきました。
山の中にある超ど田舎ですが、最高に面白い町でした。
神山町は、5000人ほどの小さな小さな町。
ですが、ITベンチャー企業などのサテライトオフィスとして誘致したり、
多種多様なクリエイターが集まったりと、何かと話題になっている町です。
羽田空港から、飛行機で1時間ほどで、徳島阿波踊り空港へ。
徳島といえば、阿波踊り。
空港から、車で1時間ほどで神山町へ到着します。
・・・すげー田舎感。
筆者も田舎育ちですが、でもこの町の景観は本当に綺麗でしたね。
山の形とかもすごい綺麗、川もあるし、人工物もそこまで多くないし。
自然が好きな人にとっては、最高に癒される場所だと思いますよ。
で、神山町といえばITのサテライトオフィス。これが縁側オフィス。
ここにはいくつかのIT企業が入居しています。
現地の雇用を生むということではなくて、単純に都会のサテライトオフィスとして稼働しているようですね。
各企業にもよりますが、希望者がこっちに移住してきて働いていたり、一定期間だけこっちにきて働いたり。
要するに、「選択肢の一つ」というのが意味合いみたいです。
今は、無料のビデオ通話ツールができたり、無料のファイル管理ツールができたりと、IT技術が進んだおかげでほとんどの工程がオンラインで完結できてしまいます。
業種や職種にもよりますが、特にIT系の企業は顔をあわせる必要はもはやない。
これは、起業経験のある筆者も肌で感じています。時代が変わったからこそ、実現できる一つの地方創世の形かもしれません。
こちらは宿泊施設付きのサテライトオフィス。「WEEK神山」。
WEEK神山のオーナーさんによると、社員にとってもこのサテライト制度は希望する者が増えてきたとのこと。
本社(東京)とサテライト(神山)で、仕事効率のデータを長期間に渡って記録してみたところ、どうやらクリエイティブ系の仕事はサテライトの方が若干効率が良かったんだとか。
逆に、ルーチンワーク業務の場合は東京の方が効率が良いらしい。おもしろい。
なんとなく、感覚的にも納得できますね。
筆者も、朝5時に起きてこの景色を眺めながら1時間半くらい仕事をしました。
心なしか、めっちゃ仕事がはかどりました。こんな生活も良いですね〜。んー最高。
(でもコンビニとかすごい遠いけどね!あと、夜遊ぶところは皆無。)
他にも、
SHIZQプロジェクト(http://shizq.jp)という活動などもあったり。
都会に住んでいたデザイナーさんが家族ごと引っ越してきて、やってるんだって。
いまや増えすぎてしまった人工林は、自然を守るためには良くないとのこと。
杉を使って、こんなコップを作っている。
(杉の加工は、業界的には”完全に非常識”なんだって。加工が難しいらしい。このコップを作るのに商品開発だけで1年。いまこれを作れる職人はこの世に1人しかいない)
筆者も勉強代として、一つ購入。
なんと値段は1万3000円!
最初一瞬見たときに、内心(アホか!こんな高いの売れるわけねー。資金ばっか出て行って死ぬぞ)と思ったが、どうやらそうでもないっぽい。
結論から言うと、PR(お金をかける”広告”じゃなくて”広報”です)がうまくいったからだと思われる。
高付加価値商品を売る上で、そして、新しいものを世の中に広める上で一番効果的なのが、PR戦略。
「時代のキーワードが入っているかどうか」というのがかなり重要なポイントとなる。
プッシュ型(こちらから広める)じゃなくて、プル型(向こうから勝手にくる)であること。
「地方に移住」、「働き方革命」、「自然保護」、「地方創生」
記事にしたくなるような、キーワードが散りばめられている。
一度パブリックに出ると、波及効果で次々とメディアから声がかかるようになる。
商品にストーリーがあれば、いくら高付加価値商品でも買う人は現れる。
かなり多くの成熟市場ができてしまった今の時代(=先行企業に広告費じゃ対抗できない)、本当に実践すべきやり方だな〜と感じました。
あと、地味に見逃してはいけないのは、黒字化するまでどうしていたのかということ。
これは筆者の予想だが、この移住した夫婦はもともとハイスペックのスキルを持ったデザイナーさんなので、デザインの受注仕事で稼いでいらしたのだと思う。すごい、の一言。
これは、血気盛んな起業家は陥りがちなミスだけど足元を見るのは本当に大事。とにかく会社は死んだらおしまい。そんな簡単にはうまくいかない。どうやって食いつないでいくかは、考えなきゃいけない。やりたいことだけでは、うまくいかない場合が多い。
いや〜、でもこのコップは本当に綺麗な商品に仕上がっています。
価格は高いですが、その形は本当に洗練されて”美しい”。芸術品だなと思いました。
皆さんもぜひ機会があったら買ってみてください。
さて、話を戻しましょう。
神山町は本当に面白い町でした。
たった5000人の町なのに、この他にも”見たことのないような新しい活動”がたくさんありました。
神山町の場合は、どうやら官主導ではなく、民主導型。
雨後の竹の子のようにボコボコと勝手にいろんな取り組みが立ち上がるとのことだった。
いま”形”として見えるものは成功した例だけだが、その裏にはきっと数えられないほどの”失敗した事業”があったことだろう。ここも見逃しがちだが、重要なポイントだ。
地方創生で、参考にするために多くの人が訪れるようだが、
「これをやったら必ず成功する」なんてそんな甘い魔法の杖はビジネスにおいて存在しない。
と、すれば、この町の本質は何かと考えれば、「挑戦させる空気感」だと筆者は感じた。
これだけの活動が軌道に乗って、それがパブリケーションを呼び込み、
実際に神山に訪れる人、そして、カネを呼び込む。
これだけの事例を成功させるには、挑戦の回数を増やすしかない。
このど田舎でそれができるのは、本当に奇跡だなと思う。
なぜなら、田舎は特に”腰が重い”からだ。これは、田舎育ちの人なら共感できることだろう。
何か新しいことをしようと思えば、何かとつけて潰される。
日本全体でもそんな空気はあるが、田舎は特にその空気で充満している。
では、なぜ神山がこの挑戦できる空気感を醸成できたのか?
そのルーツは、どこにあるのか?
それは、どうやらアーティスト・イン・レジデンスという活動にあるっぽい。
これは1999年から始まったプロジェクト。
公募で外国人アーティスト(様々な分野のアーティスト)を募集し、一定期間神山に住みながら、創作活動をするという取り組み。
外国人で、しかもアーティストとなればいわば”よそ者中のよそ者”
田舎のおばあちゃんおじいちゃんにとって、彼らは見たこともない生き物だったに違いない。
そんな活動のおかげで、町のあちこちには外国人アーティストが残していったこのようなナゾの?アートがある。
(全身スピーカーでできた鳥居。本当に音がなるらしい)
つまり、この空気感は15年近くをかけて重層的に醸成されてきたものだと言える。
それが、この町の本質だと思う。
一朝一夕で真似できるものではないし、側だけ真似をしてもうまくいくわけでもない。
地方創生、コミュニティ、働き方、そんなキーワードで沢山のヒントを与えてくれた旅でした。